破   壊
 初めての面談で聞き取った内容の裏付け調査を始めた。

 疑心暗鬼な部分が殆どだったが、彼の話を否定し切れないのも事実だった。

 父親の件は別にし、彼の幼少期を知る人間達に聞き取りをして行くと、殆どの人間が口を揃えて、

「いつかはとんでもない事をする子になるんだろうなって、近所中の噂になってたんですよ」

 と言った。

 例の子犬の件を聞いてみたが、事実かどうかは確認出来なかった。

 当時、隣家に住んでいた住人は、もう何年も前に引越していた。

 子犬の話をすると、きっとそれが原因で越したんじゃないかとみんな言う。

 子犬を殺したのが事実なら、確かにそうかも知れない。

 一概に全てが本当の話だとは信じられないのは、犯罪者の多くが平気で嘘をつく事を私は身をもって体験してるからだ。

 犯した罪を隠す為の嘘なら、まだ理解出来る。

 その逆が結構あるのだ。

 やってもいない事件を、さも秘密の告白めいた口調で語り掛けて来るのだ。

 何度も私はそれに振り回された。

 その度に、先輩弁護士から、

「彼らの言葉を決して鵜呑みにしては駄目さ。所詮、犯罪人は何処迄も犯罪人だからね」

 と言われ、納得はするものの、心の片隅には否定する自分が居た。

 罪を憎んで人を憎まず、という言葉は何の為にあるの?

 と自問する私。しかし、今回はさすがにそんな気にはなれなかった。

 それでも、真実を法廷の場に、という気持ちだけは失わず、何とか折れそうな心を支えていた。

 中学の卒業式に、同級生の女の子を殺したという話は、かなり現実離れしていて、ホラー映画か何かの影響で生まれた妄想ではないかと思っていたが、現実にその女の子は行方不明になったままでいた。

 当時、家族から出された捜索願いを受けた警察は、誘拐等の犯罪、或は変質者による性的暴行事件に巻き込まれたのではないかと、懸命な捜索活動をした。





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