破   壊
 二度目に命を奪った相手が人間。

 僕の父親さ。

 本当は、父親よりも母親を殺したかったんだけど、その話は後で。

 中学一年。13歳になったばかりの頃だった。

 殺意……

 この言葉を意識したのは、もう少し後の事なんだけど、この時は、別に父親が憎いとか、嫌いとかで殺した訳じゃないんだ。

 そういう意味では、子犬を殺した時に似てるのかな。

 父親は、癌で入院しててね、ずっと寝た切りだったんだ。

 その日、前の日から病室に泊まり込みで来ていたんだけど、もうすぐこの人は死ぬんだなぁ、位にしか思わなくて、別に悲しいとかって気持ちにはならなかったなぁ。

 何日も前から、人工呼吸器に繋がれて、意識も失った父親の姿に、

 面倒臭え……

 ていう感覚は確かにあった。

 でも、殺そうなんて少しも思わなかった。

 機械から送り込まれる酸素で、痩衰えて骨と皮だけになった胸が、規則的に意味も無く上下している様子を、する事無しに眺めているのが嫌になったんだ。

 ただそれだけさ。

 これが理由と言えば理由になるのかな。





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