破   壊
 幸い、息子が刺した相手は命を取り留めた。

 息子の身柄は家裁送致となり、少年審判を受ける事になった。

 少年院送致が決まる迄の間、息子の身柄は鑑別所だ。

 面会に向かう私の首筋に、八月の陽射しが容赦無く照り付けた。

 じりじりと焼ける首筋に、ハンカチを当てながら、鑑別所の門を潜る。

 暫く待たされて再会した息子は、まるで違う雰囲気になっていた。

 丸刈りにされた頭。

 野暮ったいジャージにランニング。

 目を伏せている息子に声を掛けた。

「坊主頭も意外と似合うじゃん。ちゃんと、ご飯、食べてるの?
 ……手紙、読んでくれた?返事、書けたら、ちょうだい……」

 息子は終始無言だった。

 結局、息子が発した言葉は、

「ああ」

 の一言だけだった。

 帰り際、私は鑑別所の職員に呼ばれた。

「大輔君の事でお話が……」

 案内されるまま、通された部屋に行くと、別な職員が私を待っていた。

 職員は、簡単な時候の挨拶をすると、一冊の大学ノートを差し出して来た。

「これは、大輔君の所内日記です」

 促された私は、ノートの表紙をめくった。





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