引き金引いてサヨウナラ
『死ぬかもしれない』
その言葉が、叶に重くのしかかる。
急にふさぎ込んだ叶を、弘は気がかりそうに見つめた。
その視線に気付いた叶は、弘を安心させようと微笑みかけたが、うまく笑えない。
弘はさしたる動揺もしていないように見えた。
少なくとも、自分よりは。
他人を気にかけるということは、それだけ心に余裕があるということだ。
弘はきっと、叶よりも強い覚悟で、この場に臨んでいるのだろう。
叶は弘に、自分の怖じ気づきかけた心を見透かされそうに感じ、曖昧な笑顔のまま目をそらした。
「悪かったな」
二人の──否、候補生たちの雰囲気を感じとったらしい仁が、体を縮めるようにして頭を下げる。
皆の覚悟に水を差すことになってしまったと感じとったらしい。
いや、とあちこちから否定の言葉はあがるが、力は無い。
叶も慌てて「なんでもないから」と否定したが、それもあまりうまくいかなかったようで、仁は気まずそうに頭をかいた。