引き金引いてサヨウナラ
和也が黙り込み静かになった病室は、息苦しさや張り詰めた空気などはなく、ただ訥々(トツトツ)と語り掛けるような、穏やかな雰囲気で満たされていた。
「ちぇっ」
弘は決まり悪そうにしつつも、どこか吹っ切れたように舌を鳴らした。
「まぁな。じめじめしてる場合じゃないよな」
言い聞かせるように呟いた弘に、和也は頷いた。
途中ハラハラしながら見つめていた叶も、和也の言葉を、自分の心に深く刻み込んだ。
生きてる限り、命ある限り、証を刻みつけよう――
黙りこくった叶に、弘は先程よりも明るい声で言った。
「じゃ、叶。
約束通り、高いところが大丈夫なのかダメなのか、教えてもらおうか」
叶は小さく笑った。
「あぁ、約束してたんだっけね。あのね……」