引き金引いてサヨウナラ


叶が約束を果たそうとした、その時。


ためらいがちなノックのあと、ノブが回る音がして、すうっとドアが開いた。


「弘……」


弘の視線が、入ってきた人物を捉えた瞬間、柔らかなものへと変わった。


「よぉ」


掛けた言葉は叶たちに向けたものと同じだったが、響きは全く違う優しいものだった。


「晴香?」


なかなか言葉が出てこない様子の晴香に、弘は問い掛けるような目をする。


「びっくり……したんだよ? 心配した……」


そう言って、半ば泣きそうになりながら、弘に近付いた。


そしてその後ろから、美菜がゆっくりと病室に入ってきた。


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