引き金引いてサヨウナラ
「叶……っ」
美菜が、くん、と叶の袖を掴んだ。
叶はゆっくりと振り向いて、「何?」と軽く首を傾げ、優しい声を出す。
美菜は袖から手を離し、切なそうな顔をしながら、掴んでいたあたりを見つめる。
ひきとめておきながら、とっさに声が出てこないのは、叶と同じだった。
言いたいことが有りすぎて、でもいざ言おうとすると真っ白になってしまう。
時間だけがいたずらに過ぎていく。
浮かんでは消えてしまうたくさんの言葉を捕まえようと、美菜は焦るばかりだった。
間を持たせようと、とにかくなんでもいいから、必死に言葉を並べようと美菜は口を開いた。
「叶……背、伸びた?」
「どうだろう」
こんなことが言いたいわけじゃないのに、と美菜は唇をかむ。