引き金引いてサヨウナラ
人々は混乱しながらも、一カ所を目指しているようだった。
両親もそこを目指しているらしい。
災害避難場所である近所の小学校。
こんなときに役に立つかはわからなくとも、情報も物資も集まる可能性が高い。
柚江が緊急を伝えた隣家では、おじさんが外から、おばさんに怒鳴っていた。
「荷物なんかいい! 次いつまた飛んでくるかわからないんだぞ!!」
その言葉に、美菜は背筋がゾクッとする一方、どこか落ち着いている自分に気づく。
言い知れない恐怖と、
信じられない非現実的な言葉。
何かの間違いに違いない。
きっとあと少ししたら、またなんでもない日常に戻っていくんだ。
いや、もしかしたら夢なのかもしれない――
だが美菜の考えをよそに、空をどす黒い煙が支配していた。