ケイカ -桂花-
どこからかケイの声が聞こえてくる気がした。

愛する人をうっとりと語る声、指示するテキパキした声、終わりの無いおしゃべり、私を呼ぶ声、笑い声。

木に触れた手から一気に流れ込んでくる。

そこに、いつしか宮崎が混じってくる。

初めて交わした会話、照れた笑顔、きりっとした横顔、切ない顔。

繋いだ手と重なった唇の温もり。

宮崎への思いを、私に確認させるみたいに次々と浮かんだ。

全てに愛しさと切なさを伴って。

私のありったけの気持ちを、手を通してキンモクセイの木に告白していた。


その間、私を抱きしめる様に、甘い匂いが優しく私を包んでいた。
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