焦れ恋オフィス

申し訳なさそうなその声は、私の様子を窺うような心細さも感じられるけれど、私がどんな返事をしようとも会社へ行くという強い気持ちは隠されていなくて。

「うん……。いいけど、何かトラブルでもあった?」

「いや。…今の電話は今年も設計デザインコンクールで大賞逃したって連絡。2位だったらしいわ」

ははっと軽く笑う声はどこか乾いていて、本人には満足できる結果ではないらしい。

大賞を獲りたいと何度か呟いているのを聞いていたから、私もどう言葉をかけていいのか困ってしまう。

「なかなか大賞は取れないな」

さらっと言いながらも眉間のしわはまだ残っていて、それほど大賞が欲しかったのかと気付いた。

普段から名誉や役職にこだわらない夏基なのに、ここまで大賞に執着しているなんて意外で、戸惑いがわいてくる。

「そういえば、入社してから毎年コンクールに作品出してるね」

「……まぁ、出品しても、毎年大賞は獲れてないけどな」

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