ユピテルの神話
僕は飛ぶ事が出来ました。
大地の揺れにも負けず、
雨にも負けず、
僕の思う通りに、願った通りに飛ぶ事が出来たのです。
音もなく静かに。
まるで夢でも見ているかの様に、先程まで居た七色の花畑を過ぎ、黒い雲がかかる村の上空へと…
その羽根で飛んでゆきます。
夢…
夢ナノカモシレナイ。
村の惨状を目にした時、夢であって欲しいと願いました。
――…悪夢。
人々の家は崩れ落ち、
畑は荒れ果て、
土埃と雨と風が舞う暗い闇。
人々が逃げ惑うその中心では、見た事もない「黒い大きな影」が泣き叫んでいました。
――ギャァアァァ…!!
「……っ!!」
耳を塞ぎたくなる程に響く大きな鳴き声。
その声に連動する様に、
大地が揺れています。
口から覗く鋭利な牙。
頭からは、上空の僕へも届きそうに伸びる鋭い角。
あれは、まるで「竜」。
まるで悪魔の化身。
恐怖をおぼえる鳴き声とは裏腹に、大きな瞳に溢れる哀しみ。
大粒の…、
大地に降る、涙。
大きな黒い翼を地に這わせる様に何かを守る、その先には…
倒れた、
小さな…白き花。
「――…ロ…マ…?」
花たちを必死に守るその姿が、あの愛くるしい彼と重なりました。