ユピテルの神話


森は、光に溢れていました。

風たちが、森の主に僕たちの噂話を運んだのでしょうか。
木々から降る緑色の光が、明るさを増して僕たちに注いでいました。

気が付けば、
いつの間にか眠りから覚めたロマが、まるで自分の事の様に嬉しそうに僕の膝に擦り寄っていました。


僕は、エマが大好きでした。

彼女を想う。
それだけで優しくなれました。
それだけで笑顔が溢れました。

亡きロマ。
彼は僕にとって信頼出来る、かけがえのない人でした。
ロマが大切だったという思い、それ以上にエマが大切で愛しかったのです。

くすぐったい温かな想い。

それが「恋心」なのだと気付き、育った想いが「愛情」なのだと分かるまでに時間は掛かりませんでした。

温かな時間でした。

手を寄り添い、
ただ傍に居るだけで、
お互いを感じるだけで、

幸せだったのです。

こんなにも心が満たされた事はありませんでした。


僕ハ…
彼女二逢ウ為二

コノ世界二居タノダ。


そう思える程でした。
これまでのどんな辛い思いも、哀しい思いも、全てを打ち消してくれるかの様でした。


僕たちは言葉なく、
想いを通わせていました。


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