嘘と嘘で始まる
俯く私の頬を優しく指で撫でる慎也。
その手を自分の手で包み見上げると、真面目な瞳がじっと私を見下ろしていた。

「帰って欲しいなら、この涙はなんなんだ?」

「え?」

反対の手で頬を触ると、溢れ出した涙で濡れていた。

「泣くくらい俺の事好きなくせに、帰れるわけないだろ」

「そんなこと…」

「好きなんだろ?俺が」

動かない私の体をそっと抱き寄せて玄関に入ると、耳元に慎也の吐息がかかる。

「帰るわけないだろ。どれだけ待ったと思ってるんだ」

そして、ドアが閉まる音をぼんやりと聞いた。


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