嘘と嘘で始まる
「実菜は、別れた恋人と酒を飲むほどまだ気持ちの整理がついてないはずだからって」

「で…帰ったの?え!じゃなんで奏はここに来たの?」

「……ムカツク……」

「へ?」

突然の慎也のつぶやきに訳がわからないでいると、頬に添えられていた手に力が入る。

え?なに?

あっという間に慎也に引き寄せられ、私の体は慎也の胸の中にすっぽり収まった。
手に持っていたコーヒーカップの中身はなんとかこぼれず、けれど大きく揺れていた。

慎也がそれに気付くと、私の手からそれを取り上げて、サイドテーブルに置いた。
そして再び私をぎゅっと抱き締めて

「たとえ元彼でも、他の男の名前呼び捨てにするの、むかつく」
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