嘘と嘘で始まる
いつものふざけた慎也とは全く違う表情をいくつ見せるの?

そんな切ない顔は、反則だよ…。

「慎也の気持ちって何?」

「……」

私の手にある小箱が慎也に取り上げられて、そのままゴミ箱に落とされた。

「……ずっと、こうしたかった」

振り向いた慎也の瞳は、

『で、実菜はどうする?』

と語っているようで。
慎也の彼女の事や、これから私達はどうなっていくのかとか知りたい事はいっぱいあったけど、じっと返事を待つ慎也にこれ以上私の気持ちをごまかすなんて……無理。

私は、一歩一歩近付いて、慎也の前に立つと

「ぎゅってして欲しかった」

飛び込んだ私を抱き締めてくれる慎也の胸は温かくて、もう二度と離れたくない。

「……やっと、お前から来てくれた」

大きく息を吐いてつぶやく声を耳元で聞きながら、慎也に回した手に、もっと力をこめた。
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