遠目の子鬼
僕は楽器をケースにしまうと又兵衛に一礼して、なっちゃんに続いて教室を後にした。


なっちゃんの後ろを歩きながら僕は又兵衛との会話を思い出していた。


「自信…かぁ」


ぽつりとつぶやいと、その言葉が、なっちゃんの耳に届いたらしい。


「…なあに?」


なっちゃんは、軽く振り向き、肩越しに僕を見ながら呟いた事を確認するかの様に、僕に尋ねた。


「あ、う、ううん、何でも無いよ…何でも」


又兵衛に褒められた事が結とても嬉しくなってきた。そうか、僕は自分に自信を持っても良いのだと改めて理解した。

         ★

「ねぇ、お父さん…」
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