学び人夏週間
彼の言葉に、私は言いたいことを飲み込んだ。
『これがうちのやり方』
そう言われてしまっては、新人同然の私は何も言えない。
郷に入っては郷に従え。
雇い主はこの「みなみ塾」なのだから、納得はできないけれど、ここのルールでやるしかない。
「次のコマの時、トイレに行くフリでもして他の部屋を見学してみたら?」
「うん、そうしてみる」
私は彼のアドバイスに頷き、国語部屋へと戻った。
憎たらしい生徒たちはちゃんと部屋に戻ってきており、早くも素直に課題に取り組んでいる。
さっさと終わらせて自分たちの目的を果たしたいのだろうが、『やればできる子』というべきか。
私は少し安心して、ここへ戻る前に受け取った他の生徒たちがやった課題のチェックを始めた。
静かな教室に、外から漏れ入ってくるセミの鳴き声、カリカリ文字を書く音、消ゴムを使う音などが響く。
さっきの時間が嘘のように、二人とも真面目に問題を解いている。
課題のチェックも進む進む。
国語からやる子は少なかったようで、チェックはすぐに終わってしまった。
「ちょっと出るね。すぐに戻るから」
「はーい」
私はそう言って、俊輔のアドバイス通り他の部屋の見学を行うことにした。
といっても、開け放たれた扉のところから覗く程度だが。
どのクラスも生徒は5人以上いて、それぞれ課題に取り組んでいる。
質問する生徒がいて話し声が響いているクラスもあるし、うちのようにシンとしているクラスもある。
この中のどれだけの生徒が取り組んでいるフリをしていて、どれだけの生徒が真面目にやっているのかは、ぱっと見ただけじゃ見分けがつかない。
うちの二人がワガママなだけだったりして……。
私は最後に少しだけ緑あふれる外の景色を眺め、国語部屋へ戻った。
「ただいまー」
松野はチラッとこちらを振り返り、無言で課題の続きに取り組む。
重森は大きな声で言う。
「遅かったな。うんこか?」
まあ……想定内の反応だけど。
「あんた小学生みたい。下品」
サクッと松野が切る。
重森がムスッと悔しそうな顔をした。