AEVE ENDING
橘の傷にまみれた指が、僕の首筋を撫でる。
それはまるで、壊れ物に触れるように。
「…っ、わたし、雲雀が、」
―――壊れ物はどちらだろう。
「っ、ひ、ぁ」
肉声とテレパスの区別もつかない程、頭に血が昇っていたのか。
(ひばりが、ほしい)
琴線を霞めるような声色で、それはこの心臓を鷲掴みにした。
抑えも利かずその小さな体を組み敷いて、まるで獲物を捕らえた獣のように荒く息を吐いて、その唇を喰らうように、奪って。
乱暴に堪えられないと言うように、橘の体が軋む。
けれど寧ろ堪えがたいのは、僕のほうだ。
抑制できない狂気と情愛が、彼女を苦しめてしまう。
「…たちば、なっ」
自分の切羽詰まった声を聞き、その声に反応する橘を嗤う。
嗤ってしまいたいのは寧ろ、優しさと余裕すら持たない己だと云うのに。
―――決して乱暴にしたいわけじゃないのに、傷を見ると爪を立ててしまう。
苦しさに歪む目尻が愛しくて、縮こまっている舌に噛み付き吸い上げ酸素を与えない。
鳥肌を立てる皮膚という皮膚を甘噛みしながら、足首を掴み内腿を上げさせた。
露になる、橘の器官。
そそられる、という実感に目眩がする。
もがくようにばたつく手足を自分のそれで拘束して、肌を擦り合わせて、剥き出しの肉同士が歪むような摩擦に、息を飲みながら。
「っ、ひば」
助けを求めていた。
橘の小さな体が、狂気に喰われてゆく。
体の外だけでなく中も侵すように嚥下させた唾液が、橘の胎内の器官を通り皮膚に染みていく。
(―――僕だけの)
それだけで、最高に興奮した。
(あぁ、もう、…無理だ)
「自分」から彼女を守るよう、最後の最後まで取っておいた思考の砦を手離す。
「…ごめん 、」
荒く吐いた謝罪と共に、彼女の小さな体に、穿った穴を開けた。
乱暴に乱暴に、それでも眩むほど、露わに。
「っ、ひ、ぁ」
橘の肋骨が軋む。
艶やかに色付いた体は、腐る寸前の果実。
それは甘く腐敗した汁を垂らして、崩れるのを待っている。