AEVE ENDING
―――真鶸には、両親のことを包み隠さず話した。
隠したところでいつ妙なところから真実が明るみになるか知れないし、下手に隠しだてしては不用意に真鶸を傷付けてしまう結果になると雲雀が判断した結果だ。
兄である雲雀自身が、彼らを家から追い出し、街から「外」へと追放したこと。
そしてその行方がすぐわからなくなり、後日、彼らの持ち物と思われる私物が海辺で見つかったということ。
盗賊に盗まれたか自ら入水したかは定かではないが、それは彼らの行方が完全に途絶えたことを意味していた。
『―――僕には、彼らを赦すという選択ができなかった』
雲雀は初めて謝罪した。
真摯に、「彼」の選択を待つ。
『赦して欲しいとは言わない、―――真鶸』
真鶸は、泣いた。
はじめは倫子と雲雀に気を遣い気丈に強がっていた脆い砦も、すぐに決壊して泣きじゃくる。
彼は悼むことを知る人間だ。
なにより彼にとって彼らは血が繋がった家族であり、その残忍な諸行を知ったからといって、今までの愛が色褪せるわけではない。
(きっと雲雀にも、愛が、あったんだろう…)
それが救いになるわけではないけれど。
『父様、母様…』
父らしくはない、穏やかで優しい人だった。
母らしくはない、たおやかで美しい人だった。
その裏にどれほどの残虐性を持っていたとしても、彼らは確かに、真鶸の父と母だったのだ。
『…ごめんなさい、ごめんなさい、倫子さん、兄様』
彼らの諸行に傷付けられた倫子を前に、二人の死を悼む己を悔いて、真鶸は泣きながら謝罪する。
その涙は雲雀と倫子の胸を痛くさせ、その小さな姿が壊れてしまわないかと恐ろしくさせた。
けれど真鶸は、その危惧をあっさりと裏切ったのだ。
『今日だけ、今日だけは泣かせてください』
明日にはきっと、笑ってみせます。
そう涙顔で、ぐしゃぐしゃの笑顔で言う。
そしてその言葉通り、真鶸は翌日にはいつもの笑顔を見せた。