AEVE ENDING








そしてその心地良いぬるま湯に漬かったままでは、この先なんの実りもないこともわかっていた。



(私に、アダムとしての道はない)

他の同級生達は、この箱舟の課程を終了し、卒業したあとはアダムとして本格的に環境整備に関わることになる。

それは国が決めた指針であり、保証された人生だ。


けれど倫子に、その道は用意されていない。

何故ならば倫子は、アダムとしては不良品だからだ。

アダムでありながら人の身で、その力は修羅に匹敵するというのに駆使できない。

だからといって確かに行われた悪魔の研究が、人に戻ることを許さない。


(…帰る場所もなく、いつか、無惨に死にゆくだけ)




―――奥田によれば、箱舟連盟は、「橘倫子の卒業してからの進路は、本人の意思に従い、修羅との未来を見守る」を総意とした。

今までは幾田桐生と雲雀の両親が障害になっていたが、事実上、倫子はお役ごめんとなったのだ。

とは言え、政府とアダムによって非人道的な研究が行われた証拠そのものである倫子を本当の意味で解放することはないだろう。

急に、見知らぬ土地に身ひとつで投げ出されたような気分になった。



『迷う時間ならまだたくさん残ってる。ちゃんと考えな』

奥田はそう言ったが、考えれば納得する答えが出るとも思えなかった。

癪だが、桐生の意思を継いで、この星のためになにかできればそれはそれで有意義なのだろう。

けれど、自分ひとりの力でそれができるとは思わないし、雲雀にそれを押しつけるつもりもない。



(…なにがしたいんだ、私は)

考えはいつまでたっても堂々巡りで、倫子の体は巻いた渦に飲み込まれたまま浮上しなかった。

いっそ雲雀に、一生傍にいて欲しいとはっきり告げることができたなら、まだ未来に希望が抱けるのに。







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