AEVE ENDING







街に出たのは、久々というよりは初めてに近いかもしれない。

未だかつて外出を申請したことはなかったし、それを受理されるにはそれ相応の理由も必要だから、倫子といわずほとんどのアダム候補生達が街へ繰り出すことはない。

例外は勿論あるが、その例外を地でいくのが雲雀だった。



町並みはどこか西洋寄りで、日本風の建物はあまり見ない。
どこも広い庭を大きな垣根で囲み、いかにも裕福な区画という風情だ。

乗り物はないが、歩道は整備され、脇には人工受精で産み出される針葉樹が植えられている。
土の部分は人工プラントで、毒された自然土の代わりとして利用されていた。

陽射しの届かないこの時代で、雲を通して得られる微量の紫外線で育つよう改良された植物だ。

僅かな光で光合成もするが、あまり長くは育たない。


「…それでも、こういう植物が外にも出回れば、ちょっとは環境もよくなりそうなもんだけどなー」

針葉樹の並木道を歩きながら、倫子は感慨深げに吐き出した。

それだけの種や技術がありながら、それを「外」には出さず、「街」だけが潤沢な恵みを維持しているように思える。

思っていた以上に緑豊かな街並みに、環境美化をアダムに頼る前にまずそこからやれと、やり場のない怒りすら湧いた。



「確かに政府はその方面には力を入れていませんが、この街にもそういう運動家の方がいらっしゃるんですよ」

隣に並ぶ真鶸が真剣に声を出す。
個人的にそういう活動をしている人間も少なくはないらしい。


(でもそれって、自己満足の偽善だよなあ…)

金持ちの道楽だ、と言い捨てたくなるのは貧乏人だからか、そんなことすらできない己が情けなく腹立たしいからか。

(いやだな、)

卑屈だ。




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