AEVE ENDING






「もうすぐ着きますよ」

真鶸がにこにこと言う。
それを見て、倫子はなんともいえない気分になった。

思い出の詰まる「家」に帰るのは辛くないかと箱舟を出る前に聞けば、真鶸は困ったように言った。


『…実は、あまり思い出はないんです。僕は体が弱かったし、二人もお仕事がお忙しくていらっしゃったから』

寧ろ兄である雲雀との思い出のほうが多いくらいだと、あの柔らかな笑みを浮かべた。

そこで、雲雀が時々東部箱舟を抜け出して真鶸を見舞っていたことを聞かされた。
それは雲雀が箱舟に収監されてからずっと続いたと聞き、雲雀にとっても真鶸の存在は大切なのだと改めて実感する。





「…橘、折角だから君は散歩でもしてたら」

邸宅に着く前に、前を歩いていた雲雀が倫子を振り返った。

外出時も箱舟の制服を着るようにとの規則の為、シャツに細いリボン、黒のジャケットという相変わらずの格好だ。

勿論、倫子と真鶸も同じである。



「そうですね。邸にいるよりは暇は潰せるかも」

雲雀の提案に、真鶸も賛同する。

二人が育った家というものに興味があったが、未だにあの二人の匂いが色濃く残っているだろう。

そう考えたら、今無理に踏み込む必要はなかった。

持ち主が真鶸に代わり、彼の色に染まってから訪問しても遅くはない。



「…うん、そうする」

それを踏まえて雲雀が言い出し、真鶸がその意図を読んで言ってくれているのがわかったので、素直にそれに頷くことにした。

あまり遠くに行きすぎない範囲内で散策するということで、倫子はふたりと別れ、落ち葉が美しい並木道を引き返した。





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