AEVE ENDING
道行く人々は質素だが上品な洋服に身を包んでいる。
けれど街の人口は決して多くはないので、通行人も疎らだった。
それでもこの贅沢な並木道は、どこまでも続いているというのが、無駄なようで当然のようで、不思議だった。
「…なんて名前の木だろう」
かさかさと靴の裏で鳴る落ち葉が新鮮だ。
こんなにたくさんの葉が繁る木々の群生は、見たことがない。
(…人生は木のようなものだと、奥田が言ったんだっけな)
人生は一本道だけれど、それは自分が選択した道が繋がった一本になるだけであって、本当はいくつにも枝分かれしてその一本一本を選ぶ選択肢があるのだと。
(だけどそれは、裕福な人間に限ってのことじゃないのか)
貧しい人間は産まれたからにはただひたすら生きていかなくてはならないし、そこに選択する余地などないように思える。
アダムとして覚醒すればまさしく用意された一本道で、それは己が決めた道というより受け入れなくてはならない定められた道だ。
それとも、今の倫子のように右にいくか左にいくか迷っているこの小さな岐路も含めて「木」だというのか。
「…あほらし」
そんなものまで枝にしてしまっては際限なさすぎる。
そして今まさに、倫子は今まで手にしていなかった選択肢を与えられていた。
いや、選択肢とは言えないかもしれない。
倫子が今手にしているのは、もっと自由なものだ。
けれどそれを窮屈にしているのも自分自身だとわかっている。
どうしたってままならない倫子の前には一本の道が伸びている。
けれどその先は薄雲が掛かっていて、どうにもはっきりしない。
その先を見るには自分が決めて進まなくてはならないのだ。
そしてその時初めて、雲は晴れてそこに何があるかわかる。