AEVE ENDING








わかっているのかいないのか、絶妙な視線を投げ掛けてきた雲雀に、奥田は冷や汗を掻きながら苦笑いした。

そんな奥田を目に入れず、倫子はふと顔を上げる。



「…そういえばさあ、西部の理事長って誰なの?私、見たことないんだけど」

あれだけ元東部の理事である桐生とやりあっていながら、西部の理事とは一度として顔を合わせたことがないどころか名前すら知らない。

一大行事である筈の交流セクションや国際交流のパーティーの時、桐生の犯罪が明るみになった時でさえ、「彼」はその姿を現さなかった。


「奥田がたまに理事から言付かったとか、指示を受けたとか言うけど、どうしてわざわざ奥田を間に挟むわけ?引きこもり?」

忙しいのはわかるが、桐生に比べるとあまりにも不透明なベールが掛かっていて釈然としない。

この箱舟に来てから実はずっと疑問だったそれを、倫子は初めて口にした。

今までは気にはしても、特にはっきりとさせたい疑問というわけでもなかったからだ。



「…あぁ、橘は知らないんだ」

雲雀が納得したようにぼそりと呟いた。
それを受けて、奥田の肩がびくりと跳ねる。


「え!?お前知ってんの!?」

意味深な発言に倫子が素早く食いついたが、雲雀はちらりと瞼を上げて奥田を一瞥しただけだった。

「…さあね」

小さくなる奥田をよそに、この場に飽きたらしい雲雀は溜め息を吐いて出ていこうとする。

「待ってよ、雲雀!教えてよ!」

それを倫子が追いかけて、後には奥田とササリ、アミが残る。



「……」

倫子が出ていったドアを、三人は暫く無言で見つめていた。




「…まだ言ってなかったの?」

アミが驚いたように言い、ササリは呆れたように腰掛けていたベッドから立ち上がった。

そのまま奥田の頭を叩き、コーヒーポッドへと向かう。


「早く言わないと一生言いそびれるわよ。簡単じゃないの、―――君の監視役として、研究員から西部箱舟の理事に転職しました。って」

こぽこぽと注がれたコーヒーを受け取ったアミも、奥田を非難するように見ている。




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