AEVE ENDING




皇が去った後、男はぐったりと項垂れた。

この俗世から隔離された孤国『北の島』で育ち、はや七十八年。
代々この島の指導者に遣えた身ではあったが、あれ程まで自由奔放で自らを省みない指導者は初めてだった。

無邪気で人懐こい性格は、生き残った島民達にも支持されており、何より若い男衆とは堅い絆で結ばれている。
底抜けの莫迦に見えて、本島から押し寄せる国政の手には策を巡らせ安全に回避する知恵もあった。
そして戦闘能力は歴代の指導者の中でも、群を抜く皇。

少々困りものなのが、指導者としての自覚が僅かばかり足りないことか。
殺し合いのなかで存在意義を見いだすような好戦的な指導者など聞いたこともないが、男はまさしくそういう人種だった。


「さて、儂らもぼやぼやしてはおれん」

だからこそ、その滅茶苦茶な煌めかしさに皆が惹かれるのだろうとも知っている。
かく言う男も、自他共に認める皇の崇拝者であった。


「皇をお守りせねば」

ヘマをしてアダムなんぞに捕まってはこの島は終わりだ。

なにせアダムといえば、我々人類を生き物とも思わぬ残虐非道の新人類だと云う。


おぉ、恐ろしや。





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