AEVE ENDING
倫子とアナセスはそんな男二人を気にすることもなく、話を続けた。
「…植物の栽培ですか?」
「そう、砂漠や荒野でも育つような強い種が「外」の集落に出回れば、もっと生活が豊かになると思うんだよね」
雲雀のサラダにフォークを刺し、瑞々しいレタスを目の前に掲げる。
箱舟で支給される食材は、街の郊外にある大掛かりな工場で人工栽培、管理されたものだ。
「外」ではまず、こんな新鮮な食材は手に入らない。
「…あぁ、しっかり根が張れば、土中の毒を植物が吸い取ってくれて、浄化作用にもなりますね」
アナセスが納得するように頷いた。
そうして毒を吸った植物は刈り取って、生活での火種にすればいい。
「うん。ある程度毒が出尽くせば、食用の作物も植えられる。集落の人間が栽培方法を学べば、いつか今よりもっとましな自給自足の生活ができるようになる」
本来なら政府が率先してやるべきことだった。
けれどアダムの誕生により、生活を苦にする難民の救済より、もっと大掛かりな環境改善に乗り出したのだ。
ある意味、政界でもそれなりの地位にいた桐生の人類嫌いが、難民救済の歯止めになっていたともいえる。
「いつか、みんなが笑って暮らせるようになるよ」
今はまだ綺麗事だとしても構わない。
それをいつか行動に移せるなら、それはもう理想論ではなくなる。
そんな倫子を真正面から見据え、アナセスはその柔らかな口許に小さく笑みをはいた。
その笑みはどこか意味深で、倫子は口を噤み、アナセスを待つ。
「…私、スラム街の出身なんです」
小さく囁かれたそれは、倫子にだけ届く音声。
(―――自らの傷を顕にする勇気を)
「…米国の箱舟に拾われるまで、ゴミを漁って生きてきました」
目の前の彼女からもらった。