AEVE ENDING
「迎えは明日では…?」
雲雀の言葉に、朝比奈は目を丸くした。
「島の人間と橘が仲良くなってしまったから。ミッションの意味をなさない」
「なにその私が全部悪いみたいな言い方」
飄々と言い放つ雲雀に、未だ頭を鷲掴まれたままの倫子も口を挟む。
「橘!雲雀様に失礼な口をきくんじゃありません!」
そして朝比奈の一喝。
「…出たよ、このスズメ中毒者が」
「橘、お黙り!」
キンキンと高音が響き渡る朝比奈の声にうんざりする。
子供達もそのヒステリックぶりに驚愕し、敬遠しているらしい。
騒がしかった浜が一瞬にして静かになった。
「…雲雀さん」
しかし再び騒ぎ出した女二人から離れた雲雀に、武藤が声を掛ける。
彼から雲雀に声を掛けることは珍しい。
「あの女の服…」
武藤の視線を辿れば、死体を見て気絶した朝比奈に血痕を見せないよう体育座りをしながら朝比奈の説教を聞いている倫子の姿があった。
(脆い気遣い……)
朝比奈に対する倫子のヒビの入ったガラスのような気の使い方に呆れた。
「あれがどうかしたの?」
倫子から視線を戻せば、やる気なさげな表情を浮かべている武藤と目があった。
「あの女、人を殺したんですか」
いちいち倫子に構いたがる男だ、と思う。
そこになにがあるかなど知らないが、少々煩わしい。
「君も見たでしょう。あの死体の血だよ」
「…まさか、死体の上に転けた、とか?」
武藤がげぇ、と顔を歪める。
「そこまで間抜けに見える?…見えるけど」
「じゃあ、どうして、」
「漁ったから」
「は、」
「死体を」
ハ…。
雲雀の簡潔な応えに、武藤の薄い唇から侮蔑の笑いが漏れた。
「イカれてやがる」
───ヒュッ。
武藤がそう呟いた途端、彼の前髪がぱらりと切れて砂浜に落ちた。
びん…と薄ぺらい金属が振動する音に真横を見遣れば、松の木に束が和彫りのナイフが突き刺さっていた。
生身の痩身は凶暴性を帯び、武藤を制している。