AEVE ENDING
シャワーを浴び終えたところで部屋の扉が開いた。
かれこれ十分以上は経っている。
それなのにまだ廊下にいたのか、という疑問を表すように、雲雀はその愁眉を寄せた。
それに気付いた倫子が、にやりと笑う。
「食堂で夜食作ってもらった。食おーよ」
そうして掲げられた両腕には食堂で使われている食膳用のトレイ。
見れば、生クリームが渦を巻くコーンスープと厚く輪切りにされたフランスパンが数枚。そしてバターとジャム。
倫子にしては、嗜好が上品のような気がする。
「なんか食堂のババアまであんたのこと知っててさぁ。私が夜食下さいっつったら、雲雀様にはこれ、とか言って渡された。しかも一人分。だから殴って二人分用意させてきたよ」
見れば、トレイにはきちんと二人分の夜食。戦利品らしい。
「…女を殴ったの」
その境目のない手癖の悪さには呆れる。
しかし雲雀にそれをいう資格はない。
「前々からすげえ陰湿なババアだったからさ。前なんか私が落ちこぼれだからって天丼頼んだのに海老天わざと抜かれてたんだよ?殴ったくらいじゃバチあたんねーもん」
疎外されている立場にしては、とてつもなく自己中心的で図太く逞しい。
(…そんな態度だから、反感を買うんだよ)
半ば強引に押しつけられたトレイを受け取り、雲雀は心底から呆れた。
「食べよーよ、腹減った」
そう言って北の島で着替えたままの服を脱ぎ捨て、自室に放り投げる。
シャツに膝上のパンツ姿のそれに、雲雀は更に呆れた。
「…色気がないということを自覚してるなんて思ってもみなかったけど、見苦しいからやめてよ」
「うぅるせぇえよこのスズメ!大体、見苦しいってなんだ!普通の運動会スタイルじゃん!」
「君って馬鹿なの?今は運動会じゃないよ」
雲雀の呟きに腹を立てた倫子は、自室のドアを乱暴に閉めてからこちらに引き返してきた。
「くたばれ」
そんな倫子を冷ややかに眺め、ベッドに腰掛ける雲雀。
「君の日本語は理解できない。したくもないけど」
(…ウザ)
微笑を浮かべてそうのたまった雲雀に、倫子は内心で毒づいた。
「その頭のなかも、とっても不愉快」
ニッコリ。
やはり筒抜け。
「なにしてるの。食べるんでしょ。早く座りなよ」
苛立たしげに立ち止まった倫子を促し、雲雀はトレイを差し出した。