AEVE ENDING
「…っ、ぃ」
(…ヤバいな、押さえてないと千切れる)
ぶらさげたままの重みに耐えられなかったのか、ぶちりと皮膚が裂けた音を耳にして、倫子は負傷した腕を支えるように握った。
(これじゃあ、完全に両手塞がり…)
万事休す───。
(どうする、倫子。こいつらの相手をするには、私の力不足だ)
右腕からはポタポタと際限なく出血が続いている──このままだと、出血多量は確実。
どうにか彼らに帰っていただく方法はないか。
―――出来れば、穏便に。
(……でもなぁ、)
倫子は苦虫を噛んだような眼でオッドアイのひとりを見た。
「もう頭キタ!殺してやる!」
リィは黒と翠を鋭利に向けて、殺意剥き出し。
(挑発し過ぎた…)
今更ながら自分の悪い癖を後悔する。
牙を向けられると倍で返してしまうこの意地っ張りぶりが、自分を窮地へ追い込むとは。
しかし今更だ。
反省しても、もう遅い。
怒りに打ち震えるオッドアイはやる気満々だ。
「全身ズタズタにしてやるから!解った!?」
この通りである。
「…宣言されて、はいそうですか、なんて言う馬鹿が居るか」
そして反省した端からついつい反撃してしまう。
反省の意味を知らない橘倫子、花も恥じらう十七歳。
「…駄目だよ、リィ。彼女は神様のものだもの。殺しちゃったら神様は仲間になってくれないよ」
悪趣味な弟が、弱ったように口を開く。
思いも寄らない敵の発言に、倫子は内心でほくそ笑んだ。
(いいぞ弟、その調子だ。その調子で姉と帰って下さい)
もはや他力本願である。
我ながらの救いようがない。
「大丈夫よ。あの方の傀儡の力があれば、本人の意志に関係なく───」
一気にまくし立てようとした姉に、弟が目を見張る。
「リィ!言っちゃ駄目!」
かいらいのちから?
ふたりの会話に紛れ込んだ言葉に、倫子は顔をしかめた。