AEVE ENDING





―――しかも、雲雀を傀儡にするって?



「バカが。あの雲雀が、そう簡単に操り人形になって堪るかって───…」

ドゴンッ。

あと一文字で言い切れる筈だった台詞は、頭上で突如起きた爆音に掻き消された。
慌てて真横に避ければ、鈍い墜落音と衝撃が辺りに響き渡る。
勢い余って転がった倫子の視界に、天井の塊が落下したもとの立ち位置。

―――もし避けていなければ、確実に轢死していただろう。

砂煙の立ち込めるなか、オッドアイが鈴のように嗤う。

「駄目じゃない、ロゥってばもう。目立ちすぎよ」
「ごめんね、リィ。殺していいんだって思ったら、つい…」

どんな「つい」だよ。
ふざけた会話を紡ぎ出す姉弟に、倫子は怒鳴り散らした。

「あっぶねーだろうが、コ」

ラァアア、と続く筈だった台詞。
それも再び奪われた。

今度は、またも研ぎ澄まされた「風」。

斬れ味抜群のそれは、倫子の首の皮を引き裂く。
持ち前の反射神経で、首が飛ぶことは免れたが―――。


「…あぁん、失敗。首を斬り落とすつもりだったのに」
「大丈夫だよ、リィ。ほらもう一回チャレンジだ!」
「どんだけ物騒なチャレンジだよ!」

ふざけきった会話に突っ込まずにはいられない。
しかし、体力も気力も、そろそろ限界だ。
全身がピリピリと痛むし、血液を流し過ぎて意識も朦朧としている。

「ピアノ」は相変わらず脳内を蝕んだまま――強くなったような気さえする――なのだから最悪だ。


「…っちくしょうが」

無力だ。


「次で終わりだよ」
「バイバーイ」

にぃ、と笑むふたつの同じ顔が、まるで仮面のようにゆらゆらと揺れていた。

「愛しい神様に祈りは済んだ?」
「洗礼は受けた?」
「神様の恋人は、さぁて、天国に行けるだろうか」

歌うふたりの言葉はまるで讃美歌のように。
しかし倫子にしてみれば、なんで讃美歌?である。

「…こちとら生憎、仏教徒でね!!」

叫びながら、思い切り腕を振り上げた。
風を切る音の終着点は。


「…っ、」
「きゃあっ」

倫子の投げた重い塊─―落とされた天井の断片―─が、ロゥの目尻のギリギリを掠める。
血が流れる、とまではいかないが、翠色をした眼の端には鮮やかな擦り傷が出来上がった。





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