AEVE ENDING
それを見た姉は、蒼白。
「…酷い!ロゥの綺麗な顔に!」
確かに綺麗な顔だが、殺す殺されるの瀬戸際でなにを甘っちょろいことを。
「五月蝿い知るか!傷のひとつやふたつでいちいち騒ぐな!」
なんだかもう、倫子がふたりの保護者の様相になってきている。
「大丈夫だよ、姉さん。姉さんに当たらなくて良かった」
涙目の姉を優しく気遣う弟。
大変微笑ましい光景ではあるが、そんなものに和んでいる暇はない。
倫子は間髪入れずに走った。
二組のオッドアイがこちらから視線を逸らした隙に、詰めれるだけ間合いを詰める。
二人が足音に気付いた時には、もう遅い。
(───先ずは、)
反応の遅れたリィの華奢な体を真横から蹴り押し、そのまま間髪入れずに姉の前方に立っていたロゥの腹に飛び込む。
(再起不能にしてやる)
リィを蹴った足と同じ右足を振り上げ股間に一発───。
ガシッ。
「!」
「危ないなぁ…」
あと数センチ、というところで蹴り上げた膝を止められた。
ギリ…。
左手一本で膝を握り潰されるほどの強さで掴み止められている。
目の前には、オッドアイを不愉快に歪ませた男の顔。
(───…クソが、)
舌打ち。
なにか、策は。
片足を牽制されたまま葛藤する倫子の耳に、姉の声が届く。
「やだもう!いたぁい!」
あぁ、そうだ。
「…ちょっと失礼」
「───え、痛、」
悲鳴を上げたリィの長く靡く髪を、腕を伸ばして鷲掴む。
足をしっかり掴まれたままの体勢が幸いしてリーチが伸びた。
「っきゃぁああ」
ブチブチブチッ。
皮膚を引きちぎる勢いで髪を引き抜く――実際、相当な塊が抜けた。
痛みに絶叫する姉の姿に、弟は動揺する。
「リィ…!」
(…甘ったれた奴らだな。命取りになるよ)
ロゥがリィに気を取られたその隙を突いて、倫子は掴まれていた足を力任せに振り上げた。
不意を突かれたロゥの拘束は、いとも簡単に倫子を解放する。
───が。
「…っ!」
後ろに引いていた右腕を瞬時に握られた。
傷口に。
「ぃ、ぎ、」
爪を立てられる。
ちぃ、と肉を喰い破る爪が激痛を引き起こし、悪寒となって背筋を這い上がる。
全身に駆け巡る痛みは腕の力をなくし、鷲掴んでいたリィの髪を手離してしまった。