AEVE ENDING
「───残念。戦場での負傷は片腕を失うことと同等のリスクだよ?」
知ってた?
ロゥが嗤う。
傷口に爪を立てたまま。
(―――痛い痛い痛い!)
「…っロゥ、そのままでね」
髪をぶち抜かれたリィが、炎を湛えてこちらを睨み付けている。
それを見返しながら、倫子は腕の痛みに低く呻いた。
「今すぐ、殺してあげるから…!」
リィの長い指が倫子の腫れた頬に伸び、ずるりと爪を立てられた。
顔を歪めて、耐える。
「…っ、ならさっさとしろよ、悪趣味はどっちだ」
人を弄ぶようにいたぶる様が気に入らない。
傷口に爪を立てられ、痛めつけられている倫子は、憎々しげに吐き棄てた。
「…黙ればいいのに。気が強い人だな…」
好みだ、と間の抜けたロゥの声が回廊に響いた。
「ね~ぇ、リィ。僕にやらせてよ」
「駄目よ!私がするの!」「ええー、ケチだなぁ」
倫子を二人で挟み込み、姉弟がきゃんきゃんと騒ぎだす。
なんとか逃げだそうと体に力を入れるが、もう全身ボロボロで役に立たない。
しかも、ロゥが姉に反論する度、傷口に当てられた爪に力が入るから、困る。
傷口に入り込む鋭い爪の抉るような攻撃に、右腕には既に感覚がなかった。
(…どうする、倫子。いい加減どうにかしないと―――)
しかし落ちこぼれには策も力もない。
あぁ、無力だ。
力が欲しい。
雲雀みたいに、絶対的な、力が。
(…あの頃は、それを手にするくらいなら死んだ方がマシだって何度も思っていたのに)
それを今更、渇望するとは。
―――嗤える。
自嘲気味に唇を歪めた時だった。
…カツリ。
倫子の耳が、姉弟の口論とは別の音を拾う。
「…?」
カツリ。
まるで、靴音のような。
規則正しくこちらに近付いてくる。
カツ………。