AEVE ENDING
「…アダム達が、支給活動を始めているぞ」
「それに、崩壊した家屋の復旧作業もしてるらしい」
「薬の配布や、傷を治せる医者も連れてきているそうだ」
「あぁ、ありがたやありがたや」
エリアを進むにつれて、そんな声を聞くようになった。
そしてあちこちに点在する、東部西部箱舟の黒い制服達。
痩けた顔に喜びの表情を張り付けた貧困エリアの人々。
アダム達も必死で福祉活動に勤しんでいる。
───だが。
「衛生状態が悪すぎる。これじゃ、ただのその場凌ぎじゃん」
あらかた町を見回った倫子が、ポツリと呟いた。
(…馬鹿の割りには正しい)
雲雀は興味もなくそんな事を思う。
「大体、これじゃあまるでアダムが人間より上に立つ生き物みたいじゃないか」
したり顔で奉仕する同級生達。
それを畏敬の眼差しで見ている貧困地区の人々。
―――なにかがおかしい。
その違和感に、憤慨している。
おかしな子だと、思う。
自らもアダムでありながら――例えイヴと呼ばれる落ちこぼれでも――それに固執していない。
(アダムとして覚醒した人間は、大抵その特別な能力に優越感を感じ、誇り、驕り、アダムとしての自分に醜く執着するものだけれど)
この橘倫子というアダムには、それがない。
彼女の友人であるらしいあのアミという優秀なアダムでさえ、そういった要素は少なからず感じ取れるというのに。
(…対等であろうとしてるんだ)
無理にでも、人間達と。
(―――おかしな子…)
雲雀がそんな事を考えているとは露知らず、倫子は奉仕作業にかこつけて住民の女性にセクハラする馬鹿を苛立たしげに睨み付けている。
雲雀もそちらに目をやり、小さく呟く。