AEVE ENDING




「子供のうちはまだ大きな影響は出ない。───ただ、成長するつれて蓄積されていった毒は濃度を増す。…大人が働けなくなれば、エリア全体がああなるのは必然だろうね」

憶測だけど。
そう付け足した雲雀を前に、倫子は形容しがたい顔をした。

酷い顔だ。
今の話を聞いてするような顔ではなかった。

「なに、その顔」
「…私、昔、あの海水飲んだことあるんだけど」

海水の危険性を目の当たりにし、自分の体を危惧しているらしい。
しかし、そんなもの雲雀にしてみれば。

「そうなの?なら死ねば?なんなら殺してあげようか?」

大した問題ではない。

「…いや、優しいのか優しくないのかよく解らない……」

大丈夫だと慰められるどころか、シネと言い棄てられ、あまつさえパートナーに向かって殺してあげようか?
怒ったような、それでいて泣きそうな、でも泣けない、とんでもなく不細工な顔をした倫子に雲雀は笑いかけた。

「馬鹿だね。海水一杯が致死量なら、このエリアの人間は既にみんな死んでるよ」

理解力のない幼子に言い聞かせるような優しい声でそう口にした。


「…つまり?」
「君は死なない。残念」

首を少し傾斜して、おどけて見せた雲雀に倫子は冷ややかな視線を送る。

「…なにが残念、なんだよ。てめぇ人が死ぬのがそんなに嬉しいのかコラ」

お行儀悪くガン垂れる倫子に、しかし雲雀は惚れ惚れするような微笑を浮かべたまま。

「正確に言えば、僕自ら手を下した人間が苦しんで苦しんで逝くのがイイ」

正直に性癖を吐いた。

「今、毒と棘のコラボが聞こえた…。ヤられたわ……お前、地獄行き決定だよ。蜘蛛の糸に泣くよ、絶対」

倫子、限界である。

「その時は君を道連れにして踏み台にする」
「ちょっと待てコラァア!本当にやりそうでこわい!厚かましいにも程があるだろ!逝く時くらい一人で静かにいけよ!」
「修羅は寂しがり屋らしくて」
「いや知らねえ。それよりあんたみたいな神様がいてたまるか。修羅なんて神話の中だけで充分だっつの」
「話がズレてる」
「ズラしたのお前だろ!」「君でしょう」

小休止。

「変な方向に行くのは全部お前のせいだろ…」

あまりにも天晴れな雲雀の態度に、倫子は半ば呆れたようにそう漏らした。




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