AEVE ENDING
「なにそれ。僕を捻れた人間みたいに」
「あんたが捻れてなけりゃ、世の中のみんな、野球バット並みに真っ直ぐ折れねえってことになるよ」
「バカじゃない?」
「だからそういうとこウゼェ」
倫子が噛みつく。
雲雀は雲雀で、倫子にも自分にも内心呆れていた。
(「コレ」と話をすると、どうして無駄なことばかり口にしてしまうかな…)
相手をする自分が悪いのも、確かなのだが。
「こんな馬鹿みたいな会話、初めてするよ」
思わずぽつりと漏らせば、倫子がぱっと顔を上げた。
間抜けに見開かれた真っ直ぐな目に、少々バツが悪くなる。
目を丸くしてこちらを見たと思ったら、口の両端を上げて、遠慮なくにぃと笑った。
「ならもっと話、しよーよ!」
その笑顔、ムカつく。
バキッ。
「…っ!なんで今の流れで殴る!?意味がわかんねぇよ!」
殴られた頭を庇いながら、ぎゃんぎゃん喚き散らしている。
けれどなんだかその声が耳によく馴染んで、いやな気はしなかった。
「…もう、ちょっと黙ってて。先に進めない」
その小さな頭に手を伸ばす。
また殴られるのかと、橘は小さく体を竦ませた。
(…小動物みたい)
しかし避けようとはしないので、その硬い髪に覆われた頭を宥めるようにゆっくりと撫でた。
バサバサの髪が、大袈裟に跳ねては乱れていく。
避けなかったくせに、倫子はぽかりと口を開けて雲雀を見上げていた。
―――失礼な。
「なに?」
不機嫌を露わにしてみれば、橘ははっ、と気付いたように首を横に振った。
「…なんでもない」
(―――優しい、なんて言えるか)
ふ、と流れ込んできた小さな思考。
誰のものかなんて、知れてる。
(…思考が筒抜けなのも、考えものだね)
特にこんな場合は、悪口が届くよりずっとタチが悪いんじゃなかろうか。
「…橘」
にたりとほくそ笑むと、倫子は不機嫌そうに鼻を白ませる。
「なにさ」
なんて不細工な顔だろう。
そんな顔を惜しみなく露にできるなんて、本当に変わってる。
「僕って優しい?」
「……、!」
あ、変な顔。
「クソッ!」
くつりと笑えば、倫子は雲雀の手を払いのけて先へと行ってしまった。
ざりざりと砂浜を踏む足音が、まるで照れ隠しみたいで、笑える。