AEVE ENDING





「橘」

呼び掛けても振り向かない。
こちらに向けられた背中が、橘の機嫌を如実に顕していた。

(やっぱり面白い)

退屈しない玩具を手に入れたと、今更ながら思う。
自分が少しばかり乱されているのは、気のせいではないのだろうが、そんな些細、気にならないくらい。


(…だから、面白いんだ)


きっと。









―――その後は大変だった。
大変だったのは、主に雲雀なのだが。

貧困エリアの環境改善に突っ走る倫子だったが、目立ち方が下手過ぎる彼女に触発され機嫌が悪くなっていく他のアダム達を見かねて、雲雀がとうとう表に立ったのだ。

くさくさと作業を半端にこなすアダム達に指示を与え、きちんとグループに分けて仕事に取り組ませる―――ペア行動が原則のセクションだというのにこの時点でおかしいが、彼らは雲雀にしてみれば従順な飼い犬で違いなかったので、思う存分使う所存だ。

パートナーが役立たずなら自分が動くしかない。

先ずは倫子が言ったように、病人と健全者を隔離する必要がある。

「雲雀様、医療棟、完成しました」

物質操作が得意なアダム数名に、放置されていた資材で医療棟を建設させる。
数学や力学など、一通りは箱舟で学ぶので、建築作業に問題はなかった。

(…まあ僕が監督したんだから、当たり前だけど)



「雲雀様、エリア内に散らばっていた使えるような物資を回収しました」

他に使えるものがないか探させていた一生徒が駆け寄ってくる。
妙に張り切った顔に、褒めてほしいと書かれていたが、気にしないことにした。


「簡易·保存食が二月分、衣服がダンボール七箱分、未使用の薬品が大量に」

彼の報告に、雲雀は眉を寄せた。

「こんな病人だらけの場所で、どうして薬が余ってるの?」
「…用途が解らなかったのだと思います。健康体の医師や看護師達も数名発見したので、箱舟連盟から派遣された医者団と共に薬を配給します」
「うん、そうして」


その他のアダムは主に雑用。

サイコキネシスは大掛かりな雑用を短時間でこなすことに適している。




< 286 / 1,175 >

この作品をシェア

pagetop