AEVE ENDING
「雲雀さん、病人達の搬送を始めます」
医療棟に携わっていた一人が現場からわざわざ駆けてきて報告にきた。
まるで雲雀を指揮官と仰ぐように。
「…勝手にしたら。そんな事まで僕に報告しなくていいよ」
「す、すみません」
「………」
自主性を育てるためのセクションであるはずだが、これでは無意味だ。
自分で考えて自分で行動すればいいのに。
(…どうしてそこで怯えるかな)
雲雀は表に立ったことを早速後悔した。
他の生徒達にしてみれば、この機会を逃せば二度と雲雀と会話することはない、と解っているからこそ、皆は皆、努力して話しかけているのだが。
完成したばかりのガラクタの山にしか見えない医療棟を視界に、雲雀は辺りを見回した。
黒服のアダム達が慣れない作業に手間取っている。
東部と西部ではやはり実力の差があるが、慣れないことに対するぎこちなさは変わらない。
うまく立ち回れる者も居れば、奉仕に慣れずおたおたする者も目立つ。
東部は特に、上層階級出の者が多いぶん、空回り状態にあった。
この凄惨な光景を見たのすら初めての者が多いだろう。
なるべく自分の手を汚さず雲雀の期待に応えようとして、アダムの力を惜しみなく発揮している。
―――けれどそれは本当に正しいのか。
(…橘にしてみれば、きっと間違いではないにしろ、正しくはないんだろうな)
他者のために自ら手を汚すこと。
それは、この地球を救済する使命を負ったアダムに一番必要なものだから。
アダムには、その力を発症した時点で自己犠牲が求められるのだ。
(憐れまれるべきは人間か、アダムか―――)