AEVE ENDING






ふと賑やかな集団が雲雀に近付いてきた。

西部東部が入り交じったそれらの先頭には、朝比奈と武藤の姿。

朝比奈と武藤は巧くやれる代表格だ。
医療棟に始まり、食糧配分もバランスよくやる。
それに倣うアダム数名が、二人に指示を仰ぎながらグループを作ったのだろう。

活動が形になってくれば、皆やれることを自ら理解して行動に移せる。
意志を持つ駒は、地盤を造ってやれば簡単に動くのだ。


「雲雀様、お疲れ様です」

するりと朝比奈が寄ってきた。
その白魚のような手には、水が注がれた銀色のカップ。

「…うん」

素直に受け取る。
能力をつかったわけではないが、こんなに多くの他者と言葉を交わしたのは初めてだ。

喉も渇きを訴える。
受け取って、そのカップが新品同様に綺麗なものだと解った。

「…どうしたの、この新しいカップ」
「セクション用に、アダムには箱舟から支給された物がありますから。その一部ですわ」

朝比奈を見やれば、雲雀が水を素直に受け取ったことに対して照れているのか、はにかみながら答えた。

「…そう」

周りを見渡せば、貧困エリアの人間達は欠けた泥茶碗を湯呑み代わりにしている。

―――やはりどうしても、格差が拭えない。

注意深く見れば、埃まみれになって奉仕するアダムはやはり少ない。
なまじ能力があるからこそ、手を汚さずに作業することが出来る。

病人を搬送するアダム達も、自ら進んで不衛生な彼らに触れようとはしない。


「……馬鹿だね」

それでは意味がない。

このセクションの本当の目的は、貧困エリアの環境改善などではない筈だ。

アダムはその特異な体質と能力故、隔離され特別視される。
それはアダムとしての確固たる意志を育て、そして驕りを生むのだ。

人間の亜種でありながら、人間を蔑視するその軽薄な精神―──それを根本から根絶やしにする為にこのセクションは設けられたのではないか。

先ほどぼんやりと考えた思考を裏付けるような現実に、雲雀は小さく息を点いた。




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