AEVE ENDING
「…失礼します」
賓客室の豪奢な扉を開ける。
この白亜の建物には似つかわしくない真紅の壁が一番に目に入り、次には久方ぶりに顔を合わせた男女の顔。
黒々とした髪を頭上できっちり結った女性は、柔らかな薄桃のスーツを身に纏い、その横に腰掛ける男性は艶のある茶髪を雲雀同様に無造作に流し、グレーのスーツを品良く着こなしている。
「お久しぶりです」
雲雀が一礼すれば、二人は綻ぶように微笑んだ。
「本当に久しぶりですね」
「堅くならずに、さぁ」
正面のソファに促され、腰掛ける。
この二人と対面する時はいつも、妙な倦怠感に魘され、無駄に頭が痛い。
「なにか、ご用でしたか」
それを隠そうともせず、雲雀は素っ気ないとも取れる固い声で尋ねた。
「いや、特には。近くに寄ったから、久々に顔を見ていこうかとね」
「忙しかったんじゃなくて?」
この、柔らかな笑みが苦手だった。
楯突くことが赦されない相手だから、尚更。
注がれた紅茶の水面に、玲瓏な客人の、まるで人形のような顔が映っていた。
たわいない話ばかりを繰り出す、それしか知らぬ言葉を話す人形のように。
「今、合同セクションをしていると聞きました。パートナーと協力し合うシステムのようだけど」
「君と互角にやり合えるアダムがいるのかい?」
クスクスと耳につく軽やかな笑い声が酷く疎ましい。
「差し支えなければ、連れてきて欲しかったわ」
「挨拶をしたかったな」
なにを、馬鹿なことを。
橘と彼らを会わせる必要が、どこにあるというのか。
「生憎、パートナーは休養中です」
言外に露骨な拒絶を含むが、しかし彼らは察しはしない。
「まぁ、怪我かなにかなさったの?」
そのたおやかな指を白桃のような頬に添えて。
その仕草が、癪に障る。
「ただの過労です」
「まぁ…。雲雀さんは大丈夫ですか?「修羅」と呼ばれていたとしても体が資本ですよ。あまり無理はなさらないで」
都合のいい言葉だと、思う。
簡単に、人を気遣うことができる、自己陶酔の坩堝。