AEVE ENDING
「あんたには…」
―――あんたには、わからない。
なにも知らないで生きるあんたには、なにもわからない。
あんたは事実を知らなくていいと、願っていた筈なのに。
「…あんたなんか、嫌い、だ」
それなのに、私を上座から牽制する。
言葉を使い暴力を使い、私を力づくで正しい方向へ導こうとする。
私とは違う、生き物。
私とは違う、綺麗な生き物。
私とは違う、正しい生き物。
「…っあんたなんか、大嫌いだ…!」
私を知らない、何も知らない、知ろうともしない、雲雀の、狂暴なまでの精錬さが。
後から後から流れ落ちる涙が腹立たしい。
雲雀の言う通り、今はこんなことしている場合じゃない。
視線を落とせば、膝元の真っ赤な血液が目に入る。
毒々しいまでに紅いそれは、あの無邪気な女の子から流れたとは、到底、思えない、のに。
(おね…ちゃ、)
乱れた呼吸で、胡乱な眼で、私を見上げた、あの子、の。
「───っ、……ぅ、え、」
(いたい、いたいよぉお…)
受け止められたままの拳が震えた。
雲雀は、なにも言わない。
「ごめ…」
ごめん、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい。
「ぅ、ぁあ…っ」
心臓が直に鷲掴みされたかのように震えて、枯れた喉が悲鳴を絞り出す。
いたい。
痛い。
『子供の試験体が二体届いたんだが、どちらも死んだよ』
『……一体はアレの血縁者だったな。期待していたが、やはり役には立たなかったか』
『なにやら、不穏な動きがあったようだが…、まあ我々が知る由はあるまい』
誰にも知られず、悪魔に殺されたあの子を。
血だらけの、小さな身体を。
『……倫子、おいで』
────ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい。
「ぁ、…あ、」
───あぁ、私はまた、助けることができなかった。
苦しい、助けて。