AEVE ENDING
「もうちょっといい声で鳴けないの?萎える」
溜め息混じりに雲雀が言えば、倫子は眉を釣り上げて怒鳴り声を上げた。
「…、っ萎んじまえ!」
「………仮にも君、女の子なんだからそういうこと言うの止めたら?」
「仮にもってなに」
「そんなんじゃ犬の嫁にも行けないよ」
(…なんで犬?)
「犬っぽいから」
尻尾を振って奥田に駆け寄る姿なんか、特に。
(…ムカつく)
思い出して自然と眉が顰められる。
なんでこんなに苛立つのか、自分の事ながら理解に苦しんでしまう。
(───大体、無意識に僕のなかを侵略してくる馬鹿が、本当のクズなわけがないのに)
───橘倫子。
なんの変哲もない、人類、雌。
新人類アダムでありながらその能力値は人間並に低い。
箱船からは「イヴ」と嘲られ、疎外される存在。
·····
(そんなものが、僕の中に意識を飛ばし、僕の意志関係なしにこちらの能力を使うなんて)
それに、北の島で捕らえた科学者たちとの意味深な関係、憎悪、嫌悪、因果。
東部、西部、両極の箱船保健医とのただならぬ仲に、クズ以下の能力値でありながら、汚染されていない地下水を引き出した馬鹿力。
───潜在能力が高い?
いいや、橘の胎内からは、アダムのアの字も感じられないくらいの微弱な反応しか見られない。
(あの力は、どこからくる?)
───それから、あの「二人」との関係。
(…下らない)
憶測が飛び交うばかりで真実に辿り着けない。
考えても考えても答えに導かれないならば考えても無駄だ。
―――ならば。
「これが終わったら、拷問だ」
雲雀が呟いた一言は、強い潮風に吹かれて倫子には届かなかった。