AEVE ENDING
チリチリと治まり始めた火災の明けが、じわりと空気を噛み締めている。
「…あいつら、どうした?」
―――随分と静かだ。
エリア内に双子の気配は感じるのに、あまりに静か過ぎる。
倫子の問いに、雲雀はあぁ、と呟いて。
「気絶させて資材に縛り付けてきた」
(……なんかもう、仇討ちする必要もないっていうか…)
呆れて半眼になった倫子をよそに、雲雀は不意に足を止めた。
雲雀の革靴になぞられて、ざり、と砂が歓喜の声を上げる。
「…?」
それに一歩遅れて立ち止まった倫子は、訝しげに雲雀を見やった。
チリチリと弾ける火の粉を浴びて、なお美しい双眸はただ真っ直ぐ、正面を見据えている。
「でも、ほら」
形のよい唇がゆっくりと口角を上げる。
「莫迦がひとり、増えたよ」
───…バチンッ。
「…うわっ、」
空気が弾ける音。
鼓膜を串刺すようなその音は、倫子の耳元で爆発した。
「―──…っ、」
脳天を真横から殴られて揺さぶられるような衝撃に、目眩が襲う。
片膝を着いた倫子の前で、雲雀は悠々と正面を見据えたまま動かなかった。
(手ぇ貸すくらいしろよ)
しかし抗議するために開けた口が、声を発することはなかった。
(な…?)
突如湧いて現れた気配に、全身が反応して鳥肌が立つ。
ジリ…。
背後で、砂を踏む音。
静かな、けれど禍々しいその空気が重すぎて、振り向けない。
(…双子じゃない。あいつらよりもっと毒々しい、凶悪な気配)
「雲雀…」
敵を正視していながら、無言の雲雀を見上げる。
ドクン…。
見上げたその表情が、より一層愉しげに歪められた。
まるで甘美な香りに酔うように、うっとりと細められた眼には血に飢えた獣のような気配。
両極を引き上げられた唇が、ずるり、舌舐めずり。
ゾ、…。
粟肌立つ、全身の細胞が。
───修羅の、本質。
「どいて、橘。死ぬよ」
警告を一言。
それにすら含まれる殺気に、倫子は反射的に飛び起きた。
立ち上がり、雲雀から距離を取る。
背後に感じた血の気が引くような殺伐とした気配すら、今の雲雀には及ばない。