AEVE ENDING
(血を、欲しがってる…)
底冷えするようなその横顔は、まさしく修羅と呼ばれる由縁。
「ひば、…」
その修羅に、躊躇いながらも声を掛けるが、またも足音に遮られた。
そちらに視線を向け、視界に映ったそれに、息を、飲む。
「───、…な」
そこに立っていたのは、異質な外見をした男だった。
剃られた頭皮には蛇の入れ墨が繊細に刻みこまれ、剥き出しの上半身は肋骨が浮き出て、病的なほど痩せこけている。
耳には獣の牙のようなピアスが突き刺さり、その眼はタトゥーの蛇の如く、鋭い。
なにより倫子が驚愕したのは、その異様に長い両手にリィとロゥの双子が髪を掴まれ、引きずられるように吊られていたからだ。
「…ふたご」
気を失ってるらしい傷だらけの双子達は、微動だにしなかった。
(なに、こいつ…)
じりじりと無機質な殺気が倫子を襲う。
しかし雲雀は対照的に、酷く愉しげに笑みを湛えていた。
「…貴殿が、修羅様でいらっしゃいますか」
低く、けれど聞き取りやすい声が、丁寧に丁寧に吐き出された。
肉声のようには響かない、固くも柔らかくもない、蛇の皮を思わせる音声が、雲雀へと向けられる。
「…そこにいる間抜けが修羅に見える?」
微笑を湛えたまま、雲雀が倫子を一瞥する。
(…なにをぅ、このスズメが)
反撃したかったが、しかし今はそんな場合ではない。
「…失礼。お二人から同じ気配を感じるもので、つい。愚問をお許し下さい」
蛇のような男は表情を変えず、雲雀同様、倫子にも視線をくれた。
その真っ黒で鋭い視線を真正面から受けた倫子は、小さく息を飲む。
(―――雲雀の前で余計なことを言ってくれる。……それにこの威圧感、双子とは格が違う)
ぞわりと粟肌立つ体に、倫子は唇を噛んだ。
目の前に立つ得体の知れない敵を恐れる弱い自分が、憎らしい。
───その夜闇より深い眼は、全てを見透かすように息を潜めている。
倫子は男から視線を外すことも叶わず、頭皮の蛇を見据えたまま警戒を続けた。
「…同じ気配?」
それとは別に、雲雀が離れた場所で小さく呟く。
(あ、マズい…)
その訝しげな呟きに、冷や汗が一気に吹き出る。
雲雀には些細な綻びさえ、見せられないというのに。