AEVE ENDING
「僕と橘の気配が、同じだっていうの?」
雲雀がいつの間にか視線を変え、こちらをじと見つめていた。
(…見るなよ)
その眼はただ静かに、倫子へ対する疑惑に満ちている。
(あぁ、マズいマズいマズい。この眼に見られると、猫に追いつめられた鼠になった気分になるんだ)
青ざめながら平静を装おうとする倫子から、しかし倫子の願い虚しく、雲雀の視線が外れることはない。
「…あぁ、まるで双子のようだ」
雲雀と倫子を交互に眺めていた蛇男が、感嘆したようにそう呟く。
「はあ?」
それにすかさず聞き返す雲雀。
声に滲む感情は、苛立ちと欺瞞。
「…この子達とは別の意味で、貴殿はその娘と強い繋がりを持っているのですよ」
男は手にしている双子に、ふらりと視線を移した。
(…頼むから黙れ)
そんな男に、倫子は内心で毒づく。
これはまずい状況だ。
この不気味な敵を前に無事に箱船に帰れるかどうかは別にして――雲雀が助けてくれるとは到底思えない――倫子の秘密が暴かれる。
よりによって、雲雀の前で。
「…っ、」
(最悪の展開だ。得体の知れない敵に、暴かれる)
まだ、駄目だ。
まだ、見極めていない。
伏せた真実を、雲雀が知った時。
(…まだ、無理)
「橘」
「…っ、」
ひたすら蛇男に向かって余計なことを言うなと念じていた倫子を、雲雀が柔らかな声で呼んだ。
倫子は恐る恐る眼球を動かし、その玲瓏の姿を肉眼で確認する。
「この男がなにを言っているのか、僕にはわからない」
無表情だが、猟奇的ななにかを含むその眼に容赦はなかった。
(わー…)
マ、ズい。
「……私にもよくわかんな───」
「…橘」
誤魔化しは遮られた。
もとより、誤魔化しきれるなどと思ってもいないが。
すべてが、深淵の瞳に覆い隠されている。
「でも君は、理解してるみたいだ」
「いや、まさか理解なんかしてるわけないじゃん!ホントッ!私も馬鹿だから!」
焦るが。
·
「なにが私も、なの?僕まで馬鹿呼ばわりする気?」
雲雀に揚げ足をとられる。
「いぃぇえ!まさか!」
「そう」
ニッコリ。
「帰ったらお仕置きだね」
麗しの微笑が再び上昇した。
台詞には麗しのうの字も見当たらないが。