AEVE ENDING
「…ふざけんなよシネ」
「なにか言った?」
「イイエナニモ」
「そう。偉いね」
「…ドーモ」
(駄目じゃん自分…、なにお仕置き了承してんだよ。殺される…)
今はこんな馬鹿な事を言いあってる場合ではないのに!
敵はたったひとり。
けれど得体が知れない。
両手に吊られた双子がそれを如実に物語っているのだ。
(しかもなんか、さっきからこっち見てるんですけど)
「───橘…?」
必死で目を合わさないよう努めていたが、不意にピンポイントで話しかけられたのでそれも無理になった。
蛇の目が音もなく倫子へと焦点を合わせる。
「…なるほど、貴女がそうですか」
なにがなるほど?
男のひとり納得した様子に、倫子は眉を寄せた。
「…ならば、彼らは置いていきましょう」
そう言うと、どさりと両手の荷物を地面に叩きつけた。
気を失ったリィとロゥは、糸が切れたマリオネットのように崩れ、折り重なって地面へと倒れる。
「……?」
それに訝しげな表情を浮かべる倫子、雲雀。
男はただ無表情のまま、雲雀ではなく倫子を凝視している。
「…あぁ、似ていますね、本当に…」
寧ろ、同じだ。
咥内でそう呟いた男がゆっくりとその長い足を踏み出した。
雲雀にではなく、倫子に。
思わず後退りそうになるが、なんとか踏みとどまる。
しかし男がなにをしたいのかわからない。
「…なんなの?」
じり、と男の間合いから逃げながら、倫子は声を低く問い掛けた。
「…主君に言われて参りました。勿論、修羅を持ち帰ることが可能なら、それが最もよろしいのですが…」
男は倫子に歩み寄りながら雲雀を一瞥する。
伸びやかに切れた目尻から、今にも血が吹き出しそうなほど鋭い眼光。
雲雀はただ、そんな冷ややかな視線を傾けるのみにとどまる。
「彼は少々、手強すぎますから」
小さく男が嗤う。
苦笑するようなそれは、再び倫子に向けられた。
「だから、貴女で我慢します」
「…なに、その間に合わせのオカズみたいな扱い」
倫子は憤慨し、静かに鼻息を荒くする。
そんな倫子に対して、男はその不気味な眼を更に細めて見せた。