AEVE ENDING





「気性も粗いですね…。主君は淑やかな女性を好まれますが」
「知るか!いい加減、黙れ!」

顔面にめり込んだ右脚を素早く引き抜き、倫子は数歩後退さる。

その時だった。
遠耳に、鳴り響くサイレンが近付いてくるのを聞く。

―――警備隊だ。



「…あぁ、双子が少々暴れすぎましたね。時間に制限が出来てしまった」

嘆息を吐くや否や、男は目に留まらぬ早さで腕を振り上げた。

ひゅんと伸縮する腕の狙いは、倫子の首。

「っ、ぎ」

骨肉を跳ね飛ばす勢いで首を掴まれたため、息が一瞬止まる。
そのまま無理矢理、持ち上げられ、首を掴まれた状態で足の爪先が宙に浮く。


「雲雀様、それでは彼女はお預かりいたしますね」

暴れる倫子をものともせず、華奢な蛇男は無表情の雲雀に形ばかりの一瞥をくれた。
雲雀はやる気なく組んでいた腕を解き、閉じていた唇も解く。



「…それを、僕が許すと思うの?」

呼吸困難に陥っている倫子に、長い睫毛が視線を流す。

「雲雀様にはこのような婢女、必要ありますまい」

頭皮に彫られた蛇と、不気味な微笑が雲雀の神経を逆撫でした。

「橘はくれてあげる。それに興味はない───けど、君の能力には興味がある」

先程から全身を覆うような圧迫感に、雲雀の口角が釣り上がった。

(…あぁ、ぞくぞくする)

その血に餓えた獣の様子に、男は控え目にさざめいて見せた。

「ふふ…、修羅らしいお言葉ですね。ですが残念ながら、時間がありませぬ故」

男の片腕で吊られている倫子は、既に意識が朦朧としているらしい。
必死にもがいていた手足がずるりと力無く重力に従った。

男にかわされた雲雀は、口許の笑みを絶やさぬまま、そんな倫子を眺めている。




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