AEVE ENDING
「…そんな役立たず、連れて帰ってどうするの」
既に虫の息となった倫子に、きっとこの会話は届いていないだろう。
起きていたとしても、遠慮なく役立たず呼ばわりしただろうが。
「傀儡にいたします。貴方の代わりに」
相変わらず微笑を浮かべたままの男の言葉に、雲雀は小さく眉を顰めた。
··
「ソレが、僕の代わりになると?」
少しばかり苛立った雲雀の声色に、男は笑みを深くする。
「…まさか。模写がオリジナルに勝るわけがございますまい。筆にしても紙質にしても、技術に至るまで、贋作は本物にかないませぬ」
───ですが。
「貴方を得るための餌くらいにはなりましょう」
かくりと脱力した倫子の体をあっさり横抱きにすると、男は苦悶を浮かべたまま気を失った倫子の頬をそっと撫でた。
「…僕がそんな不味そうな餌で釣れると思う?」
ただ慇懃な笑みを浮かべる雲雀は、小さく首を傾けた。
その言葉に、男はからからと嗤う。
「まさか。貴方には屈して頂きます。主君の傀儡となった、彼女の前に」
───そう、本物の神が紛い物に平伏す姿を。
それは雲雀にとって、予想外の言葉だった。
蛇を象る男はいうのだ。
雲雀が倫子を前にして、ひれ伏すのだと。
「喧嘩を売っているようだね…。殺すよ」
華奢な手がゆるりと男に向けられる。
その美しい指先の先端には、肉体を糾弾するような圧力の集結。
例えれば、鉄をも切断するレーザー光線だろうか。
―――ィイ…。
高エネルギーが空気と反発し合い、音を作り出す。
雲雀の白魚のような人差し指に、パチリと静電気が走った。
貫かれればひとたまりもないだろう。
しかしそれを向けられた男もまた、微笑を崩さない。
「修羅の手に掛かるなら本望でございます。………ただ、」
「現時点では、引く気なんだね」
言葉を引き継いだ雲雀に、男はゆぅるりと頷いた。
その両腕に、倫子を抱えたまま。