AEVE ENDING
「……っぅ、ぁ、」
背後で馬鹿が鳴いた。
一体何事かと振り返り、そこに立つ倫子の姿に雲雀は目を丸くする。
立ち尽くす倫子の顔。
子供の血で真っ赤に染まった膝元と対照的に青ざめた表情に、見開かれた瞳孔。
口はパクパクと魚のように開けて閉じてを繰り返し、開かれた瞳孔は雲雀を映さない。
先程とは比べ者にならない変貌っぷりに、雲雀も釣られてつい表情を崩しそうになった。
(最悪だ。なにコレほんとに呪いなんじゃないの?)
その表情は酷く排他的で意味不明だ。
脈絡が理解出来ない。
そんなものを彼女に求める雲雀のほうがおかしいのかもしれない。
「…なんて顔、してるの」
問えば、橘は弾かれたようにこちらを見て、泣きそうな顔をした。
(益々、意味がわからない)
訝しげに眉を寄せれば、倫子の顔は更に歪む。
「だって、ひばりが、わたしを殺すって……」
は?
なにをいきなり、言い出すのかと思えば。
くしゃりと歪んだ顔がじわじわと揺れていって、今にも涙が溢れそうな顔になっている。
「……そうだね。確かにいつか殺してやるつもりだけど、さすがにまだ疑問もなにも消化できてないのに殺したりしないよ。…まぁでも、いつか殺すつもりなら同じなのかな」
雲雀は大真面目な顔でそう答えた。
倫子もそれを大真面目に受け取る。
第三者から見たらとてつもなくおかしな画のような気がするが、当人達がそれに気付くことはない。
「いつか……」
橘が目を丸くした。
「そうか…。いつか、か」
あ、ウルウルしてる。
本当に魚みたいで笑える。
···
「そう、いつか、だよ。今はしない」
雲雀がそう言いきった途端、倫子は思い切り顔を歪ませた。
喜ばしいような、けれど素直にそれを喜べないような、納得できないような、憤慨するような、悲しむような、それでもやっぱり、嬉しいような。
そのまま、頭を抱えて崩れ落ちた。