AEVE ENDING
鬱蒼とした青い雲が立ち込める世界。
陽の光はとうに地上には注がぬものになったが、しかし重い雲が海に映る様も美しい。
旧文明が沈んだ水平線が一望できる西部箱舟食堂。
新しいシステムで行われた初授業を終え、東部、西部合同セクションの参加者達─―─アダム候補生達は少しばかり遅い昼食をとっていた。
雑然とした人混みのなか、味噌汁を啜る者、ハンバーグをつつく者、ホットサンドをかじる者、水のみを摂取する者───口に運ぶそれらは全く違うが、しかし、口をついて出る話題は同じものである。
「落ちこぼれの橘倫子が武藤とやり合ったって」
「あの東部箱舟の武藤?」
「ムトウって誰?」
「武藤先輩って、あの朝比奈会長のパートナーの?」
「あ、あの赤毛っぽい、かっこいい人」
「武藤って相当やる奴だろ?あの梶本も一目置いてるってウワサだ」
「東部じゃ雲雀さんの次席だって、マジ?」
「そんな奴とイヴが?そっちのがマジで?って感じなんだけど」
「で、決着は?」
「勝ったって」
「どっちが?」
「そりゃ勿論……」
ざわざわと色めき立つ雰囲気は決していいとは言えなかった。
若者特有の賑やかな酷薄さが滲んで、話題を更に大きなものにする。
「橘のやつ、医務室に運ばれたらしいよ」
「うわ、かっこわるい!」
「弱いくせに生意気だもんね、あの人」
「雲雀様のパートナーだっていうのに、謙虚のけの字も見えないし」
「コテンパンだったって」
「手も足も出ないってやつ?」
「やだーもう、そのまま死んじゃえばよか、」
―――バンッ!
「……」
騒然とした場がしんと静まった。
それを狙ってテーブルに拳を叩き落としたのは。
「…アミ、さん?」
フォークを握りしめ、落とした拳はそのままに、アミと呼ばれた少女は俯いている。
彼女の隣に座る大人しそうな少女は、彼女のパートナーだろうか。
オロオロと躊躇うようにアミを見上げている。
「…ちょ、なにぃ」
騒いでいたアダム達が再び騒ぎ出す。
アミとやらが怒っているのは明らかだが、なにに対してか理解できない。
「……豚がいくらバカ言ったって構わないけど、橘を侮辱するのは赦さないわ」
凛とした声。
顔を上げたアミは鋭い眼光をそのまま、自ら豚と称した群集を睨み付けた。