AEVE ENDING
「……もう嫌だ。離して、どいて、もうなにも言わないで」
目を逸らす。
なにかを堪えるように息を震わせて、雲雀から逃げようとする。
「…いやだ、あんたなんか、」
───欲しくなかった。
こんな醜い体も、痛みしか残らない記憶も、この胸の奥で一点だけ唯一私を慰める温かい塊も、その強い力も、言葉も心も。
「あんたなんか、要らない…」
いやだ。
私はもう、この場所に居たくない。
『───あの子の代わりに、見窄らしい少女を』
『───似ても似つかないのに、その眼だけは同じだと仰せつかったのだよ』
(そんなもの、望んで、ない)
「あんたには関係ない…!だから、…っ」
もう放っておいて、そっとしていて、あんたの傍は。
「…っ、」
───いたい。
捻りあげられた腕と、掴まれた顎のラインがきしりと鳴いた。
無理矢理上向かされて、雲雀の睫毛が倫子の頬を掠める。
「…酷いことを、言うね」
耳元で囁かれた声は低く虚しく、冷たい。
ぞっと鳥肌が立ち、顔を逸らそうにも逸らせない。
拘束する力から手加減が消えて、倫子を殺そうとする。
「───…っ、」
浅い呼気が肌を撫でていった。
肌が焼ける。
さわるな。
「っ、い、」
右腕をシルクに抑えつけられ、その痛みに全身の力が抜けていく。
無力だ。
こわい。
「っ」
その瞬間、息が詰まる圧迫感。
喉仏の軟骨を思い切り押さえつけられて、細い指が、首を絞め付ける。
(、な…)
ぐつりと右腕が鳴いた。
血が滲んでいる。
胎内から、残酷な音を立てて血が抜けていく。
小さな隙間もない、絞められた気管は鳴くことも許されない。
薄目で覗いた真上の顔はやはり綺麗であまりにも顕(あらわ)で、泣きたくなるほど、冷たい嘲笑。
ひくりと喉が鳴いた。
「───ねぇ、橘…」
甘い声がする。
甘い甘い、甘ったるい花のような香りの、声。
「殺しても、いい?」
そうして嗤うのだ。
虫螻の私をいたぶって、そして動けなくさせる。